最近やったゲーム『Return of the Obra Dinn』

あらすじ
 行方不明になっていた貨物船、オブラ・ディン号は生きた乗員を一人も乗せず帰還した。あなたは保険調査員として60名の乗員・乗客が辿った運命を明らかにしなければならない。

  このゲームの特に優れている点は2点あって、一つは後述の死の光景から謎を解き明かすゲームシステム、もう一つは見てわかるとおり特徴的なモノトーンの画面です。

 プレイヤーは「死の直前の出来事」を見ることができる謎めいた懐中時計を頼りに、船の乗組員達が、「誰が」「どんな手段で」「誰によって」「どんな凶器で」死に至ったのかを特定することを求められます。
 懐中時計は船内に残された遺体に反応して、彼らが死ぬ直前に周辺で交わされた会話と、彼らの死の瞬間の辺りの光景をプレイヤーに見せてくれます。この能力によって「どんな手段で」「どんな凶器で」はあまり苦労せずにわかりますが、問題は「誰が」「誰によって」です。
 加害者と被害者についても顔ははっきりわかりますが、それだけでは名前がわからないので、プレイヤーはあらかじめ与えられた乗員名簿と、船上の生活の一場面が描かれた絵、死の光景の内に見出すことができる少ない手がかりを吟味して彼らを特定していくことになります。これがこのゲームの楽しさだと言っていいでしょう。
 死因・加害者・被害者の特定は3件正解するごとに答え合わせが行われて、進捗状況が後戻りしないように作られているので推理に苦手意識があるプレイヤーも振り落とされずにクリアできるのではないかと思います。

 2点目の画面、これはトレイラーを見たりゲームをプレイしてもらうのが手っ取り早いですが、白黒の1bitグラフィックは、誰も居ない船上の静けさや懐中時計のミステリアスな能力、介入できない過去の一瞬の光景の表現と調和していてとても良かったです。

 また、目立たない部分ですが感心した点が一つあります。死因の特定においてプレイヤーにはあり得る選択肢全てが提示されます。つまり、ある乗員の死因を特定するときにプレイヤーは「射殺,撲殺,絞殺,.....」と死因が並んだリストから自分が推測したものを選び、死者の氏名と加害者の氏名も同様に選ぶことになります。これによって推理ゲームでイライラする原因となる「真相は(多分)わかっているのにシステムが足かせになってゲームに対してうまく入力ができない」状況の発生をうまく防げているように思いました。とはいえ残念ながら完全ではなく自分は1回だけ詰まってしました。
 リストから選ぶと書くとまどろっこしいように思えるかもしれませんが、死因リストは全てに目を通すのに30秒もかからない量なのでそこはあまり問題ないと思います。

 ゲーム序盤でも説明されることですが、全ての乗員に対して確実に身元を特定できるだけの情報が用意されているわけではなく、特に終盤では憶測にも支えられながら身元の特定をしていくことになります。ロジカルな推理を期待しすぎると肩透かしを食らうかもしれません。

(2019/7/19 automatonの作者インタビューきっかけで追記)

 特定できるらしいです。というか記事書いた時点でこういうの(リンク先は完全なネタバレを含むので注意) https://steamcommunity.com/sharedfiles/filedetails/?id=1552463657あったしちゃんと調べて書くべきだったね……(追記ここまで)

 判定:唯一無二のゲームプレイと優れたアートディレクションを持った『Return of the Obra Dinn』は誰にでも勧められる優れた作品だ。(なんで急にIGNのレビューみたいになったんだ?)


クリアまでのプレイ時間:8時間